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TCFDとサステナビリティ（サステナビリティ認証シリーズ⑥）

加藤直樹

2024/09/29

はじめに

「世の中の企業の動きを正確に知る」という視点で、企業のサステナビリティ認証をはじめ、その企業の取り組みを伝えるガイドライン・指針について紹介しています。今回は、企業の気候変動に対する情報開示における重要な枠組み、ガイドラインであった「TCFD」について深掘りします。

TCFDとは

TCFD（Task Force on Climate-related Financial Disclosures）は、金融安定理事会（FSB）が設立した、気候変動に関連する財務情報の開示に関する国際的な枠組みです。TCFDは、企業が気候変動リスクと機会をどのように特定・評価し、それに対応するかを透明性を持って開示することを求めていました。この枠組みは、企業の持続可能性やリスクに対する取り組みを評価しやすくし、投資家やステークホルダーのより良い意思決定を支援してきました。

TCFDの活動終了とその進化

TCFDは、その目標を達成し、報告書の公開とともに2023年10月12日に活動を終了しました。これにより、2023年11月以降は、賛同企業の把握や公表が行われなくなりました。しかし、その役割は終わったわけではありません。現在は、TCFDの原則が「国際サステナビリティ基準審議会（ISSB）」によって発表された「IFRS S1」および「IFRS S2」の基準に統合され、より具体的で包括的な開示基準へと進化しています。この進化により、企業は気候関連リスクに対する透明性をさらに高めることが求められています。

TCFDの開示項目

TCFDは、企業が気候関連リスクと機会を適切に把握し、その対応を透明にするために、以下の4つの主要な開示項目を定義しています。

- ガバナンス：企業の取締役会や経営陣が、気候関連リスクと機会の管理をどのように監督しているかを開示します。組織のガバナンス体制における気候変動の位置づけを明確にすることが求められます。
- 戦略：気候関連リスクと機会が企業のビジネス、戦略、および財務計画にどのように影響するかを開示します。企業は短期、中期、長期にわたって気候変動が事業に与える影響を評価し、それに基づいて戦略を立てることが求められます。
- リスク管理：企業が気候関連リスクをどのように識別し、評価し、管理しているかを開示します。リスク管理プロセスを通じて、どのように気候関連リスクが他のリスクと統合されているかを示します。
- 指標と目標：企業が気候関連リスクと機会を管理し、そのパフォーマンスをモニタリングするために使用している指標や目標を開示します。これには、温室効果ガス排出量やエネルギー効率に関する具体的なデータが含まれます。

TCFDとサステナビリティの関係

TCFDは、企業のサステナビリティ戦略において重要な役割を果たしてきましたが、今後はIFRS基準を通じてその影響力を引き続き発揮します。気候変動リスクに対する企業の取り組みを開示することにより、以下の点が期待されます。

- リスクマネジメントの向上：気候変動リスクに備え、適切に対応する企業の能力を強化します。
- 透明性の向上：企業の気候関連情報をオープンにし、投資家やステークホルダーに信頼される組織運営を可能にします。
- 競争力の強化：気候リスクに対処し、サステナブルな成長を遂げることで、企業は競争優位性を確保します。
- 資金調達の円滑化：TCFDの原則に基づいた情報開示を行うことで、サステナブルファイナンスやESG投資に積極的な投資家からの支持を得られます。

おわりに

TCFDは、企業の気候変動に関するリスクと機会の情報開示を大きく前進させ、その役割を果たしました。今後は、国際サステナビリティ基準審議会（ISSB）の「IFRS S1」および「IFRS S2」によって、その理念がさらに具体化され、企業の気候リスクへの対応を支援します。企業は、透明性を高めた気候関連リスクの開示を通じて、持続可能な成長を実現し、投資家やステークホルダーからの信頼を引き続き得ることが求められています。

次回も、他のサステナビリティに関連する枠組みや認証をご紹介していきます。学生や社会人の皆さんにとって、今後のキャリアやビジネスの参考になれば幸いです。

＜出典＞
・TCFDとは

《参照記事》
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