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ポストSDGs時代の選択⑦〜ポストSDGs時代を生きる、7つの羅針盤〜

加藤 直樹

加藤直樹

2026/08/23

「SDGsはオワコンなのか?」
そんな問いから始まったこのシリーズも、今回で最終回となります。
振り返れば、この半年ほどの間にも社会は大きく変化しました。生成AIは急速に普及し、地方創生は新たな局面を迎え、企業経営においてもウェルビーイングや人的資本への関心が高まっています。一方で、気候変動や人口減少、地域格差といった社会課題は依然として存在しています。

だからこそ、改めて考えたいのです。
SDGsの次に、私たちは何を目指せばよいのでしょうか。
このシリーズでは、「豊かさ」「働く意味」「成長」「地方創生」「AI時代の人間の価値」といったテーマを通じて、そのヒントを探ってきました。
最終回となる今回は、それらを一つにつなぎながら、ポストSDGs時代を生きるための7つの羅針盤として整理してみたいと思います。

羅針盤① 課題を解決するだけでなく、未来を描く

SDGsが世界に与えた大きな価値の一つは、社会が抱える課題を共通の言葉で示したことでした。
貧困、教育、環境、人権、気候変動など、それまで個別に語られていた問題を17の目標として整理し、「持続可能な社会をつくる」という方向へ世界の目を向けました。

一方で、SDGsが広がるにつれて、「SDGsに取り組む」ということ自体が目的になってしまう場面も見られるようになりました。
本来、目標は未来を実現するための手段です。

だからこそ、これから大切になるのは、「どんな課題があるのか」だけではなく、「その課題が解決された先に、どんな社会をつくりたいのか」という視点なのだと思います。
例えば、人口減少という課題に対して、ただ人口を増やすことを目指すのか。それとも、人口が減っても人が安心して暮らし、地域に誇りを持ち、次の世代へ文化や暮らしをつないでいける社会を目指すのか。

同じ課題でも、描く未来によって答えは変わります。
ポストSDGsの時代には、課題から未来を考えるだけでなく、未来から今を考える。
そんな発想が必要なのではないでしょうか。

羅針盤② 「足りないもの」ではなく、「すでにあるもの」に目を向ける

私たちは長い間、「もっと必要だ」という感覚の中で社会を発展させてきました。
もちろん、それによって生活は豊かになりました。しかし、成熟した社会においては、「増やすこと」だけでは解決できない問題も増えています。

そんな中で注目されているのが、アバンダンスという考え方です。
テクノロジーの進化によって、知識や情報、エネルギー、さまざまなサービスへのアクセスが、これまでとは比較にならないほど豊かになっています。

そうした時代に、「何が足りないのか」だけを考え続ける必要はありません。
むしろ、すでに私たちの周りに存在している価値を見つけ、それをどう活かすかが重要になってきます。

例えば、地方には豊かな自然や文化、長年培われてきた技術や知恵があります。企業にも、社員が持つ経験や技術、顧客との信頼関係があります。
これらは、数字として表れにくいかもしれません。
しかし、だからといって価値がないわけではありません。新しいものをつくるだけではなく、すでにあるものを見つけ直す。
そして、それを次の人へとつないでいく。

これからの豊かさは、「どれだけ持っているか」だけではなく、「どれだけ価値を見つけ、活かし、循環させられるか」によって決まっていくのかもしれません。

羅針盤③ 成長し続けることより、豊かに成熟することを考える

私たちは、「成長することは良いことだ」と教えられてきました。
企業であれば売上や利益を伸ばす。個人であれば収入やスキルを高める。社会全体としても、経済規模を拡大する。

成長は、長い間、豊かさを測る重要な物差しでした。
しかし、成熟した社会では、成長すればするほど幸せになるとは限りません。

収入が増えても、仕事が忙しくなり、家族との時間がなくなることがあります。便利なサービスが増えても、孤独を感じる人もいます。企業の規模が大きくなっても、そこで働く人が幸せになるとは限りません。
だからこそ、「どれだけ成長するか」という問いに加えて、「どのような状態を豊かさと呼ぶのか」という問いが必要になります。

そこで重要になるのが、ウェルビーイングという考え方です。
幸せを、所得や消費だけで測るのではなく、健康であること、人とのつながりがあること、自分らしく生きられること、社会との関わりを感じられることなど、人生全体の充実として捉える考え方です。

成長を否定する必要はありません。ただ、成長そのものを目的にするのではなく、「何のために成長するのか」を考える。
その先にある豊かさを見つめる。

ポストSDGs時代には、拡大することよりも、成熟することの価値が高まっていくのではないでしょうか。

羅針盤④ 仕事を「生活の手段」から「社会との接点」として考える

私たちは人生の多くの時間を仕事に使います。
だからこそ、仕事を単に「お金を稼ぐための手段」として捉えてしまうと、人生の大きな部分が、どこか自分とは切り離されたものになってしまいます。

もちろん、生活のために収入を得ることは重要です。
しかし、それだけではなく、「自分の仕事が誰かの役に立っている」と感じられることや、自分の経験や能力を活かせること、誰かと協力して何かを生み出すことにも、仕事の大きな価値があります。

AIによって、これまで人間が行っていた作業の多くが効率化されればされるほど、この問いは重要になります。
「何をするか」だけではなく、「なぜそれをするのか」。
「どれだけ効率よく働くか」だけではなく、「その仕事によって誰の暮らしが良くなるのか」。

仕事が単なる作業ではなく、社会との接点になったとき、そこには働くことの新しい意味が生まれます。
これからは、仕事を通じて何を得るのかだけではなく、仕事を通じて何を社会に返していくのかを考えることも、働き方を選ぶ上で大切になっていくのではないでしょうか。

羅針盤⑤ 地域を「変える」のではなく、関係を育てる

地方創生について考えてきたとき、改めて気づかされたことがあります。
地域を元気にするとは、必ずしも人口を増やすことでも、大きな施設をつくることでもありません。

地域の価値を生み出しているのは、そこに暮らす人や、そこに関わる人たちだからです。
近年、「関係人口」という言葉が広がっているのも、その変化の表れでしょう。

その地域に住んでいるわけではなくても、何度も訪れる人がいる。仕事を通じて関わる人がいる。地域の商品を買う人がいる。祭りや活動を応援する人がいる。
そうした一つひとつの関係が、地域を支えています。

企業も同じです。
顧客、社員、取引先、地域社会との信頼関係があってこそ、企業は長く存在することができます。

これからの社会では、規模や効率だけでなく、「どれだけ豊かな関係を築いているか」が価値になっていくでしょう。
地域も企業も、人との関係の中で育っていく。

地方創生とは、地域を外から変えることではなく、地域の中にある関係を見つけ直し、それを未来へつないでいくことなのかもしれません。

羅針盤⑥ AIと競争するのではなく、人間らしさを活かして共創する

そして、これからの社会を考える上で避けて通れないのがAIです。
AIは、知識を整理し、文章を書き、画像をつくり、膨大な情報から答えを導き出すことができます。

これまで「人間にしかできない」と考えられていたことの一部が、すでにAIによってできるようになっています。
では、人間の価値はどこにあるのでしょうか。

私は、「答えを出すこと」から「問いをつくること」へ、価値の重心が移っていくのではないかと思います。
何を解決すべきなのか。
誰のために解決するのか。
どんな未来をつくりたいのか。

こうした問いには、正解がありません。
そこには、その人が生きてきた経験や価値観、誰かを大切に思う気持ち、地域への愛着、未来への希望などが関わってきます。

AIは私たちの能力を拡張してくれるでしょう。
だからこそ、AIと同じことをする必要はありません。

AIを使って、人間にしかできない問いを深める。
AIによって生まれた余白を、人との関係や新しい挑戦に使う。
AIを脅威として見るのではなく、人間らしさをより発揮するためのパートナーとして捉える。

それが、AI時代の豊かさにつながるのではないでしょうか。

羅針盤⑦ 未来は、予測するものではなく、参加してつくるもの

そして最後の羅針盤は、「自分自身も未来をつくる側にいる」ということです。
社会について考えるとき、私たちはつい、「国がどうするのか」「企業がどう変わるのか」「誰かが地域を何とかしてくれないか」と考えてしまいます。

もちろん、制度や企業の役割は重要です。しかし、社会はそれだけでできているわけではありません。

私たちが何を買うのか。
どんな企業を応援するのか。
どんな働き方を選ぶのか。
どんな地域と関わるのか。
どんな人と時間を過ごすのか。

そうした日々の選択が、少しずつ社会の方向を変えていきます。
例えば、地域の商品を一つ買うことは、その地域の仕事を応援することにつながります。誰かの挑戦を応援することは、その人が次の挑戦をする力になります。
自分が大切にしたい価値を持つ企業で働くことも、自分自身が望む社会に一票を投じることなのかもしれません。

未来は、突然どこかからやってくるものではありません。
今日の選択が積み重なって、未来になります。

だからこそ、未来は「予測するもの」ではなく、「参加してつくるもの」なのだと思います。

おわりに SDGsの「その先」へ

SDGsは、私たちに大切な問いを残してくれました。
「この社会を、この地球を、次の世代へどうつないでいくのか。」
その問いは、これからも消えることはありません。

一方で、社会は変化しています。
AIが急速に進化し、人口が減少し、地方のあり方が変わり、働き方や豊かさの価値観も変わり始めています。

だからこそ、SDGsに掲げられた目標をただ追い続けるだけではなく、その先にどんな社会をつくりたいのかを、私たち自身が考える必要があります。
今回まとめた上記の内容が、私が考える「ポストSDGs時代を生きる、7つの羅針盤」です。

もちろん、これが唯一の答えではありません。
時代が変われば、羅針盤も変わっていくでしょう。

大切なのは、誰かが決めた正解を持つことではなく、自分自身で問い続けることなのだと思います。

豊かさとは何か。
幸せとは何か。
どんな仕事をしたいのか。
どんな地域を未来へ残したいのか。
そして、どんな社会を次の世代に手渡したいのか。

SDGsは、世界共通の「目的地」を示してくれました。
その先の道をどう歩くのかは、私たち一人ひとりに委ねられています。社会は、誰かが完成させてくれるものではありません。
私たちの日々の選択によって、これからもつくられ続けていきます。

だから、未来をただ待つのではなく、自分もその一部をつくっているのだという感覚を持っていたい。
ポストSDGsの時代に必要なのは、そんな当事者意識なのかもしれません。

未来は、まだ決まっていません。
だからこそ、面白い。
そして、その未来をつくるのは、私たち自身なのです。

《参照記事》
サステナビリティ認証シリーズ一覧はこちら
SDGs業界研究シリーズ一覧はこちら
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ポストSDGs時代の選択シリーズ一覧はこちら

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筆者プロフィール》

https://sustainable-world-boardgame.com/facilitator/n-kato

加藤 直樹

加藤直樹

SDGs/ご当地グルメ/旅行が好きです。その好きなことで仕事をしながら、各地域を盛り上げる中小企業やフリーランスの方々を後押しする活動をしています。