開発秘話
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【SDGsボードゲーム制作秘話】第7弾:学校向けワークショップの戦略と現場の実績から体感する今後の可能性
今回は、未来技術推進協会(以下、協会)オリジナルのSDGsボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」を軸とした各種学校向けワークショップの立役者としてご活躍の、保科さんへのインタビュー記事となります。
SDGsボードゲームを活用した学校向けワークショップが様々な実績を上げるに至ったきっかけや現場を通しての生の声、今後の展望まで語っていただいた内容をお伝えします!
ー学校向けワークショップ案件に携わることになった経緯を教えて下さい
元々は、学校向けSDGsワークショップを草場代表がメインで取り仕切っていた中で、横浜市立東高校に向けたワークショップを通じて、先生側から生徒達にもっとSDGsを浸透させたいとの声が上がっていました。それを受けて、生徒向けの皮切りとなる「サスティナブル研究部(通称:サス研)」向けにワークショップを実施した際のサポートに入ったことがきっかけでした。サス研向けワークショップで実績を上げたことで、一年生全員向けに何かイベントを企画できないか?との要望を受けて、自分がファシリテーターとして企画・運営させていただくことになりました。
先生方の最終的に描いているゴールは、SDGsボードゲームのそれぞれのカード(SDGsの適用事例を表すもの)を生徒自身が考えて書いて作り、それを用いてゲームをするという壮大なものでした。そういった大枠の要望を踏まえて、全3段階のステップでワークショップを実施することを考えました。
ー具体的にはどのようなものでしょうか?
第1段階としては、まずはボードゲームで遊んでもらうこと。第2段階としては、カードを作るために、生徒各々が課題を見つけてそれに対して考えるという課題。第3段階でカードを作って、そのカードで遊べる状態にするというものでした。
ただ、この第3段階の前でコロナ禍になってしまったため、まだ実施されていないというのが現況です。
ー構想・推進する上で工夫を重ねた点などはあったのでしょうか?
SDGs達成の特徴として、「答えがない問いに対して一丸となって考え抜き、自分達で答えを導き出していく」というものがあるので、ここにしっかりつながるように意識しましたね。
先生方の時代含め、我々の世代の学校教育は「答えがあるものに対して、その解き方を教える」というものが軸にあったと思います。そのため、生徒が出したアイデアについて、前例や常識を元に合っている/間違っているで判断しがちな傾向にあります。
それを踏まえ、生徒が出したアイデアを否定せず、なんでそう考えたのか、どうやって導いたのかなど経緯を一緒に確認しながら、様々な答えを一緒に導き出すのに徹することを先生方とも認識を合わせて進めていきました。彼らの世代の問題を彼らの柔軟な思考を尊重し、様々な解決策を出していくことを大事にしましたね。
ー横浜市立東高校での実績をどのように捉えていますか?
ひと学年が何百人と大規模になる東高校のワークショップを企画・運営したことはその後のワークショップ運営につながるものだと捉えています。
そもそも、先生方から事前に授業いただいていてはいましたが、SDGsという社会的なテーマへの理解は簡単ではないため、一人一人にどう教えていくかから検討していく必要がありました。人数的に50グループほどに分ける必要があり、すべてのグループにファシリテーターを置くのは人数的に無理ですし、なるべく一箇所に集めて対応しやすくする必要があったので、体育館をフルに活用することになりました。また、グループ分のボードゲーム卓を準備、運営する必要があったので、生徒さん達にコピーや切り抜きなど色々を手伝ってもらいながら一緒に推進していきました。
SDGsカードに書かれた事例や、「コラボレーション」「自己投資」等のルールも社会人経験がない学生にはイメージしにくいため、いかにたとえ話や実例を交えながら伝えるか、が大変でしたね。協会からは草場代表、半沢さん、私がそれぞれメインのファシリテーターとして参加して様々なサポートを実施したこと、既に体験・実績があったサス研のみんなが主体的に教えてくれていたのもあり、着実に進めていけたと捉えています。
生徒が生徒に主体的に教えていく、巻き込んでいくという可能性や実績を体感できたことで、他の学校向け案件にも水平展開していける展望が見えてきたように思います。
ーそれを踏まえて、特に工夫した点や気づいた点などはありますか?
一つはやはり社会人経験のない学生に用語や枠組みを理解してもらうため、たとえ話や置き換えで地道に伝えたところですね。ゲームやスポーツ、身近な生活での事例に置き換えて会話をやりとりしながら理解を促していきました。
また、大人数相手に認識や理解の統一を図るための工夫として、誰かが抱いた疑問は別の誰かも抱いていると思ったので、一つ一つの質疑応答を全体に向けて発信することで理解度を底上げするようにも工夫しました。先生方にもそれぞれの卓のサポートに入っていただいていましたが、先生によっても理解や持論にばらつきがあるため、なるべく全体で合わせるための工夫としても活用しました。こういったノウハウは今後にもつなげていけると思います。
また、第2段階の「生徒各々が課題を見つけて解決策を考える」という課題の時に、いくつかのグループに発表をしてもらったのですが、そのどれもがかなり調べてきていたり、世の中の事例をしっかりと踏まえていてクオリティが高かったことがあります。他のグループの発表に対しても集中して聞き入り、意見が活発に出たり積極的な人が多いということも体験できました。実施前は正直、社会課題は壮大でとっつきにくいテーマでつまらなく感じる人も多いのかなという杞憂がありましたが、それを大きく覆す積極性や、素直で発想豊かなアイデアがたくさん出てきたことが嬉しかったですね。
みんなが凄く素直に課題を考えたり議論したり、お互いに教えあったりしながら自分で学習していく可能性を見れたことが収穫になりました。
ただ、この熱も時間が立つと戻りますし、知識のままにしておくと自分の周りや日常との関連も薄れるので、先生を始め大人たちがSDGsの取り組みが日常的にこんなことにつながっている、活かされていることを伝えて興味と持ち続けられるようにするのは大事だと思います。
個人的に、持続可能というのは「自分ごとになっていること」だと捉えているので、そういった機会を提供するチャンスをワークショップでも意識したいですし、カリキュラムにも組み込んでいくことで強みにもしていきたいですね。
ー先生側からのご意見や評価などはどんな感じですか?
全体的に高評価いただくことが多いと感じています。特に生徒と共同で企画・運営と学習ができた経験になったこと、生徒同士が自発的に教えあって学習するという主体性を引き出せたことが非常に有意義だったと言っていただくことが多いですね。
日々の学校業務でお忙しい中にプラスして時間を作っていただいているので、先生方から評価をいただけるとこちらとしても今後につながる体感を得ることができました。
ー学校向けワークショップは様々な学校に向けて広げていけそうですね!
そう思います。ただ、しっかりと展開していくにはファシリテーターの数が足りないのは現状です。特に学校向けだと日中の開催になるので、うまく日中の時間帯に稼働いただけるファシリテーターを協会としても輩出・育成していきたいと考えているようです。
実際には学生さんから様々な質問が来ますし、普段社会生活で業務を実施している内容を学生さんに受け取りやすい内容に変換するところは柔軟性が必要だと考えています。こういった経験はファシリテーションの幅を広げることにつながるので、期待しています。
協会では、ファシリテーターの方だけのグループを作り、そこで交流を活発にすることで実績を共有して全体の知見を高めるという動きがあります。知見だけでなく、学生と社会人、組織の代表や経営者とのつながりなどを生んでいくことでキャリア形成やインターンなど実務経験を積める土台になっていくことを見て、こちらも活発にしていきたいですね。
全12回の連載予定のSDGsボードゲーム制作秘話の第8弾は、村口さんから4Stepを設けたワークショップのブラッシュアップついて詳しく伺っていきます。次回もお楽しみに!