開発秘話
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【SDGsボードゲーム制作秘話】第11弾:SDGsボードゲーム認定ファシリテーターの活躍で日本中に広げたい社会課題解決に向けた取り組み
全11回に渡って、未来技術推進協会(以下、協会)オリジナルのSDGsボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」の実務に携わってきた担当者の生の声を開発秘話として連載しています。
今回は最終回。SDGsボードゲームの製作・普及活動を中心になって進めてきた草場代表に、SDGsボードゲーム認定ファシリテーター(以下、ファシリテーター)認定制度に込めた想いや地域における社会課題解決に向けた活動における今後の展望などについて語っていただきました。
また、130人を超える認定ファシリテータ(2020年7月の時点)がどうやってそれぞれの地域で活動して、今度どういった活動に広げていくのかを草場代表ならではの視点で熱く語ってもらいました。
―ファシリテーター制度を始めた想いは?
協会はSDGsに関する社会課題の解決を目的としています。ただ、SDGsを勉強する中で、テーマがすごく広いので、自分たちが何をするのかというプロセスが分からくなります。色々と検討して、具体的なターゲットまで見えてくると、おぼろげながら具体的なプロセスが分かるような気分になりますが、それでも難しいのが現実です。
色々と考えたら、SDGsに関する勉強をしてインプットを増やすだけでなくて、「自分ゴト化」しないとダメだということに気が付きました。いくらSDGsの社会課題の解決につながる壮大な計画を考えても、誰が実行するかが明確にならないと意味がないのです。これはアイデアソンも一緒です。
そこで、SDGsボードゲームを作って、体感してもらうのが一番だと思いました。さらに、ファシリテーターとなって説明する側になれば、もっと理解が深まると考えたのが始まりです。
また、協会のメンバーだけでなく、SDGsボードゲームをワークショップで体験したことで、社会課題やその解決方法を「自分ゴト」としてSDGs達成に向けた社会課題解決活動を広めていける人を増やしたいというのがファシリテーター制度を作った想いです。
―協会だけの閉じた活動にしなかった理由は何ですか?
どんな活動でも同じですが、自分たちだけで行動してもスケール化に課題があります。協会はボランタリーな活動なので、草場商店のような形でやるよりも外部の力を使った方が我々の考えを普及さえていくことに繋がります。
また、元々の発想は「自分の言葉でSDGsに対する社会課題解決につながるプロセスを語れる人」を増やしたいというところから始まっています。そういった視点でも、協会の中だけで閉じてない今の活動方法が良いと思っています。
―SDGsボードゲームはどういった学びを与えてくれますか?
SDGsに関しては知識としては知っている人が増えていますが、社会課題に対して自分の言葉でどうやって解決していくのかを話せる人が少ないです。実際に社会課題を解決するためには、「自分ゴト化」して自分が何を出来るのかを考えられる人が必要です。我々の活動を通じてそういった人を一人でも増やしていくのが、協会の使命だと思っています。
私はどちらかというと、SDGsの細かい内容を詳しく知るよりも、「自分ゴト化」して考えられるようになって欲しいという想いが強いです。SDGsに書かれていることは、自分たちの将来に直結していくので、「自分ゴト化」して自分で考えて行動につなげないと何も変わりません。
そういった普及活動を通じて「自分ゴト化」して考えるようになった仲間たちと一緒に活動を広げ、より大きな動きにつなげていきたいです。SDGsボードゲームはそのための共通言語を持つための有効なツールです。
―SDGsボードゲームやファシリテーター認定制度の設計などで大変だったことは?
資料作成や表現などの細かい実務に関しては、村口さんが中心になって検討を進めてもらい、基本的には「自分ゴト化」という点をテーマにして考えていました。僕は村口さんが作ったものにコメントをし、認知度を上げて普及させていく活動に注力していました。
当時は知名度の低い協会だったので、知り合いのところに1000件くらいはメールを送りました。その時はクラウドファンディングと一緒に宣伝しましたし、普及が広まっていったのは外務省とのつながりが大きかったと思います。
・クラウドファンディングのページはこちら(現在は募集を終了しています)
https://camp-fire.jp/projects/191601/activities/100167
・外務省×SDGsのTwitterはこちらhttps://twitter.com/SDGs_MOFA_JAPAN/status/1178538965629976576
実際にボードゲームを制作するときには、SDGs関連のボードゲームで先行しているところを大変参考にさせてもらいました。ただ、実際に受講すると色々と問題が発生しそうなので、情報収集のみです。
例えば、一般社団法人イマココラボ(https://imacocollabo.or.jp/games/2030sdgs/)は、体感型で社会、環境、経済をバランスよく上げていくというワークショップです。研修期間も数日と長いです。
金沢工業大学のSDGsカードゲーム「THE SDGs アクションカードゲーム X(https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2019/0513_sdgs.html)」も勉強させてもらいました。大学がやっているカードゲームなのでアフターフォローがしっかりしており、2日間がっつりとイベントをやっています。
最初に、このような先行事例とどうやって差別化するのかを考えました。我々は実際にファシリテーターをやってみて、「自分ゴト化」して考えられるということを我々のボードゲームの目標としました。
実際の協会のファシリテーター認定講座は5時間くらいと他と比較すると短いです。無茶苦茶大量のインプットをするのを目的とするのではなく、自分たちとSDGsの直接の関係をどうやって考えるのかという点を入れ込んでいます。ここが最も意識した差別化のポイントです。
―現在、ファシリテーターになられているのはどういった人ですか?
ファシリテーター認定講座を受講する人は大きく二つに分かれていて、一つは業務として受講する方、もう一つは個人として受講する方です。
業務としてファシリテーターになるのは、企業の中でSDGsを広めていきたいと思っている人たちです。旅行会社などでは、旅行という体験を提供するだけでなく、学生向けにSDGsに関連する社会課題を認識して欲しいという意識が強いようです。そういった人たちは、未来を担う学生たちがSDGsの社会課題を「自分ゴト化」して、解決に挑んでいけるように取り組んでいます。
一方、個人としてファシリテーターになる人は、自分の住んでいる地域や興味のある社会課題をSDGsの観点から解決していきたいという強い想いを持っています。もちろん、仕事として社会課題を解決する取り組みを行っている人も多いですが、もっと自分の幅を広げていきたいという考えを持っている方が多いです。
―学生がファシリテーターになるケースも出てきていますよね?
そうです。最近では高校生や大学生がファシリテーターになるケースも出てきています。まだ少数なので、今後はもっと人数を増やしていきたいと考えています。このような活動を通じて、学生たちが社会課題を「自分ゴト化」して考えるようになり、自分たちの力で社会課題解決型のビジネスを作り出していける環境作りに、協会の活動が少しでも貢献できればと思っています。
例えば、今のスマートフォンを使って入手できる情報は、実は1980年くらいのアメリカ大統領が取れる情報と同レベルなのです。アクセスしようと思えば、一国のトップと同じレベルで情報が見れる環境になり、今の若い人たちはそれを当たり前のこととして生きています。
テクノロジーやプログラミングに関しても、オンラインの無料講座もたくさんありますし、様々な学びの機会があります。そのため、そういった知識では我々30代以上よりも圧倒的に優秀です。彼ら/彼女らが自分たちの社会をリアルに感じ、ビジネスモデルも学び、自分たちで自走すれば、30代以上の人がビジネスを進めるよりも圧倒的に速いです。
そういった活動が表面化していないのであれば、大人側の問題だという認識です。学校では未だに先生に教えてもらうという感覚が多いですが、学生たちが自分で社会の主役であることをリアルに感じてもらいたい。今はビジネスまで起こせる環境は整っているので、学生たちの今後にすごく可能性を感じています。
―ファシリテーター活動の現在はどのような状況でしょうか?
残念ながらCOVID-19の影響で3月以降からワークショップをやりづらい状況は続いています。ただ、個人でファシリテーターになった人は、認定講座とボードゲームで7万円も支払っているので、社会課題解決に対する想いが強い人が多いです。このような状況下でも出来ることから少しずつ動いています。
また、NPOが社会課題を解決する際には、どうしても民間企業の助けが必要となってきます。そのためには、どうやって収益を上げていくかの構築がテーマです。そういった課題をどうやってクリアしていくのかを考え、自分の地元でどうやって普及させていこうかという想いが強い人ばかりです。
例えば、大学の先生がファシリテーターになって、SDGsを人材教育に取り入れようともしています。本当にいろいろな方がファシリテーターになって、それぞれの考えで活用を始めています。
まずはそういった動きを始めていき、一つでも成果につながっていくと期待しています。2020年中にワークショップ参加者1000名という目標を立てていましたが、実は既に達成しています。
ただ、我々のファシリテーターがいるのは15都道府県くらいです。次のステップとして、これを全47都道府県に広げていきたいです。また、全国1800ある自治体に少なくとも一人ずつファシリテーターがいるようにしたいという野望もあります。
また、今は内閣府と組みながら、各都道府県のボードゲームを作っています。地域に合わせたボードゲームを自治体の中で活用することで、内部の課題を認識してもらえるように考えています。その結果、自治体の方々に色々な社会課題を「自分ゴト化」して認識してもらい、最終的には住民たちも共通認識を持ってもらうことが理想です。
すでに北畑さんがファシリテーターの交流会を広めていて、自治体間の連携を広げようとしています。また、自治体間連携を進めることで、それぞれの強みを活かした課題解決につながると思っています。そういった積み重ねで、課題解決のプラットフォームを作りつつ、ファシリテーターが活躍できる場をここ数年くらいかけて作っていきたいと思っています。
北畑さんのインタビュー記事:
・第3弾:ブラッシュアップを繰り返して現在の形への変遷
・第4弾:ボード―ゲームと共に成長してきたファシリテータ
もう一つのアプローチとして、高校生などにSDGsボードゲームを活用してもらうことで、従来課題があった「自治体」と「市民」の間の溝を埋めていけるようにしたいです。高校生たちがやれば、その親やおじいちゃんとおばあちゃんにも広がる可能性もあります。そういった地道な活動を通じて、地域の中で交流が深まっていくことが理想です。
また、協会ではSDGsの検定事業も進めています。例えば、2級ではSDGsボードゲームでワークをして、ビジネスモデルを立てるところまで求められます。これを、基本的に高校生向けに展開しようとしています。
いつの時代も時代を変えていくのは若手です。そういった人たちを盛り上げるために、SDGsボードゲームを活用していければと思います。また、日本の町工場の技術力の高さは話題になっていますが、うまく活用できていないのが実情です。そういったテクノロジーや若い人たちの感性を組みあわせて新しいビジネスがどんどん広がっていくような環境を醸成していきたいと思っています。